• NPO法人AABC(アジアン・エイジング・ビジネスセンター)
  • 2008/1/19 13:55:03

老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき (中公新書 1914)
(2007/09)
大泉 啓一郎

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医療の普及発展による乳幼児死亡率の劇的な低下と高齢者の長寿化により、世界は急速に高齢化している。また経済発展は少子化傾向を推し進めることになるため、高齢化と少子化が同時に進行する。その先頭を走るのが日本であるが、それ以外のアジアの国々でも、高齢化が進行中である。しかもそのスピードは世界最速といわれてきた日本の速度を上回る。

人口構造の変化は、その過程で、人口ボーナスという経済発展に好都合な時期を生む。この時期は子供と高齢者が少なく、労働者人口が圧倒的に多い。日本はこの時期を巧く活用し、飛躍的な経済発展を遂げた。(団塊の世代と高度経済成長期)韓国・台湾・香港・シンガポールのNIES諸国も同様である。(「アジアの奇跡」と呼ばれた時期)中国は現在が人口ボーナス期で、経済発展の真っ最中である。東京、ソウル、北京のオリンピック開催は、それぞれの国の人口ボーナス期のメルクマールといえるのかもしれない。

ただし人口ボーナス期を過ぎると、経済発展の主力となった大量の労働者が高齢化してくる。この世代は自らが産んだ経済発展の恩恵を受けて近代的なライフスタイルをとっており、子供も少ない。したがって、高齢化は急激である。日本の2007年問題がそれである。
日本は人口ボーナス期をとうに過ぎ、人口減少という新たな段階に突入しているが、NIES諸国も着実に日本のあとを追っている。その象徴が韓国における老人長期療養保険法の制定だろう。いまや世界最速の高齢化の国、世界で最も少子化が進む国となった韓国は、この法律に基づき、2008年7月から韓国版介護保険制度を開始しようとしている。

問題は、日本のように高度な経済発展を遂げた豊かな国においても、高齢者を支える社会制度の再構築のために財政的に極めて大きな負担を伴うと予想される中、まだ十分に経済的発展が果たされたとはいえない国々(=国民全体に対するセーフティネットが未整備の国)が、この重圧を乗り切ることができるのか、あるいは人口ボーナスを十分に活用できないまま、この時期を通り過ぎようとしている国々が、これらからどのように高齢化に対していくのかということである。
高齢者を支えるだけの社会的な富の蓄積がないまま「高齢者の爆発」を迎える国では、高齢者問題は貧困と死の問題に直結する。すなわち「人間の安全保障」の問題となる。

こうした問題に対する回答はまだどこにもない。アジア及び世界がはじめて経験する世界だからである。
しかしすくなくとも、高齢化の先頭を走る日本の悪戦苦闘ぶりは、これからそれに立ち向かわなければならないアジア各国の格好のサンプルにはなるに違いない。
その一つのヒントとして著者は日本における地域福祉の取り組みをあげている。コミュニティにおける高齢者支援の可能性である。
この指摘はおそらく正しい。というよりもそれが残された唯一の可能性なのではないか。その可能性の具体的な姿は、いまのところまだ誰にも見えないにしても。

本書は著者が中心になってまとめたJICAレポート「開発途上国の高齢化を見据えて」を増補強化した内容となっている。
アジアの経済と少子高齢化問題に関する基本書となるであろう一冊。

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本書における著者の問題意識はAABCの問題意識とほとんど共通する。アジアの高齢化問題に関するプラットフォームとなることを目指しているAABCでは、日本からアジア諸国に提示できる可能性のひとつは、やはりコミュニティではないかと考えている。
現状の日本の地域福祉の姿は、とうてい十分とは言い難いが、それでも民生委員児童委員制度や社会福祉協議会は歴史を積み重ねた日本の貴重な財産である。これらの活用と、中国の社区や韓国の洞といったコミュニティを念頭に置きながら、米国型の住民自発型介護・福祉・医療連携システムであるNORC−SSPのモデル実験に取り組むことなどによって、AABCはアジアに対する重要な情報発信源となることができる筈である。


※この記事は 「AABC-BLOG(http://asianaging.blog26.fc2.com/blog-entry-68.html)」 と重複しています。ご了承下さい。

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