中小企業M&Aの実施状況や支援状況、中小M&Aに必読の資料を紹介

M&Aの基礎

2022.2.229 months前

中小企業M&Aの実施状況や支援状況、中小M&Aに必読の資料を紹介

中小企業の後継者問題を解決するための手段の1つとして、M&Aが注目されています。政府(中小企業庁)も積極的に推進しており、2021年4月に「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~(以下、「本資料」)」をまとめました。

本記事では、本資料をもとに、中小企業M&Aの実施状況・支援状況を解説し、中小企業M&Aを検討する経営者必読の資料を紹介します。

中小企業M&Aの実施状況

日本の中小企業は、少子高齢化などの影響もあり、深刻な後継者不足問題を抱えています。そんな中で少しずつ増加しているのが、社外人材から後継者を探しM&Aで事業承継をする方法です。

事業承継は「子供や親族に事業を引き継いでもらうもの」という印象が強かったのですが、近年では、M&Aそのものに対する印象が良くなっており、M&Aで事業承継を行うことへの抵抗感も薄れつつあるようです。

その結果、中小企業のM&Aの件数は右肩上がりで増加しています。中小企業向けのM&Aに力を入れている「M&A仲介大手3社」、M&Aを含めた事業承継支援をしている公的機関である「事業承継・引継ぎ支援センター」では、M&Aの実施件数が年々増えているのです。

一方、M&Aの買い手側についても見てみると、買い手側が中小企業であるケースも増えてきています。事業承継・引継ぎ支援センターの成約案件では、約8割の買い手が「資本金1億円以下の中小企業と個人事業主等」となっています。また、M&A仲介業者などでも同様の傾向があり、中小企業が買い手となっているケースが大半のようです。

中小企業のM&Aが実施されている地域は、関東や近畿といった都市部に集中しているのが実情です。しかし、政府が中小企業の事業承継方法としてM&Aを推進していることから、これから地方の中小企業でもM&Aが盛んになる可能性があるでしょう。

中小企業のM&Aを推進する意義

中小企業の事業承継策としてM&Aが広がっていることは前述の通りですが、政府がそれを推進しているのはどうしてなのでしょうか。本資料では、その理由を3つ挙げています。

1.経営資源の散逸の回避

中小企業経営者の高齢化が進み、後継者が見つからなければ、黒字経営の事業であっても廃業等の選択をせざるを得ません。しかしこれは、その中小企業の経営資源が失われてしまうことに他なりません。

ひとつひとつの会社が持つ経営資源は小さいかもしれませんが、日本の企業の大多数を占める中小企業で廃業が相次げば、日本全体で失われる経営資源は非常に大きなものとなってしまうでしょう。中小企業のM&Aによって廃業が回避できれば、事業が維持され、そこで働く従業員の雇用も守られることになります。

2.生産性向上等の実現

日本企業は生産性が低いという課題を抱えています。その改善のために、規模の拡大などの再編やデジタル・トランスフォーメーションが求められています。ただ、中小企業は大企業と比較して、対応が遅れてしまいがちです。

しかし、経済産業省の調査によれば、M&Aをきっかけに、経営資源の集約化を行った中小企業は、そうでない企業と比較して生産性が向上しているそうです。M&Aにより、事業の再編や規模の拡大が実現でき、生産性向上のための投資余力が得られているのかもしれません。

3.リスクやコストを抑えた創業

中小企業のM&Aが進むことは、起業を考えている創業希望者にとってもメリットがあります。創業希望者がM&Aで事業を手に入れられれば、経営の自由度は低下するものの、創業時のリスクやコストを抑えることが可能です。

中小企業のM&Aへの支援状況

とはいえ、M&Aを実際に行うのは簡単ではありません。M&Aを成功させるためには、条件交渉やデューデリジェンス、譲渡契約書の作成など、高度な専門知識が不可欠だからです。

そこで、通常のM&Aでは、M&A仲介業者などのアドバイザーを付けるのが一般的ですが、どのようなところがM&Aの支援サービスを行なっているのでしょうか。具体的には次のような支援機関があります。

  • 商工団体(商工会、商工会議所、中小企業団体中央会等)
  • 金融機関
  • 士業等の専門家(公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士等)
  • M&A専門業者(仲介業者、ファイナンシャル・アドバイザー)
  • M&Aプラットフォーマー

M&A支援をしている業者は年々増加していますが、M&A支援を行っている業者であればどこでもいいわけではありません。大企業を得意としている業者もあれば、中小企業のM&A支援を主力にしている業者もあるためです。

資料には、譲渡対象になる会社の年商規模別で、M&A支援機関のターゲットに関するデータ(レコフデータ調べ)が掲載されています。それによれば、M&A仲介業者は年商1億円以上を中心としています。

中小企業等に地域密着で幅広いサービスを提供している地域金融機関でも、地方銀行は年商1億円以上が中心で、信用金庫・信用組合では年商5,000万円から1億円規模が中心のターゲットとなっています。また、地域金融機関はM&A支援専任のスタッフが少なく、万全な支援体制が取れているとまでは言えないのが現状でしょう。

こういった民間のM&A支援体制を補完するものとして、公的機関である「事業承継・引継ぎ支援センター」が各都道府県に設けられています。事業承継・引継ぎ支援センターでは、年商5,000万円前後の小規模M&Aから、年商3,000万円未満の超小規模のM&Aもターゲットにしているようです。

さらに政府は、M&Aによる事業承継を円滑にするための支援制度も設けています。
「事業承継引継ぎ補助金」には、M&Aをスムーズに進めるための専門家の活用を支援する「専門家活用」と、M&A後に行う設備投資等を支援する「設備投資等」が用意されています。この他にも、要件を満たす中小企業等が新たな挑戦を行うのを支援する「事業再構築補助金」や、雇用確保の促進を目的とした「経営資源集約化税制(雇用確保)」などの制度を活用することも可能です。

中小M&Aに必読の資料

本資料と、事業承継を考える中小企業経営者が読んでおくべき、その他の資料を紹介します。

1.中小企業庁 2021年4月「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小M&A推進計画~」(本資料)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shigenshuyaku/2021/210428torimatome.pdf

2.中小企業庁 2020年3月「中小M&Aガイドライン‐第三者への円滑な事業引継ぎに向けて‐」
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-2.pdf

3.中小企業庁 2020年3月「中小M&Aガイドライン参考資料」
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-3.pdf

4.中小企業庁 「具体例をマンガで解説! 中小M&Aハンドブック」
https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200904001/20200904001-2.pdf

おわりに

事業承継に関する中小企業のM&Aは、政府が推進していることもあり、少しずつ増えてきました。その背景には、中小企業の持つ経営資源を維持することや日本の生産性を高めること、さらには創業リスクを抑制する効果もあるためです。

しかし、M&Aには専門知識が不可欠で、中小企業経営者にはなかなかハードルが高いのも事実です。そのため、専門家への相談を通して、適切な支援をしてもらうことが大切です。また、政府が用意している補助金などを有効活用することも、よりよいM&Aを実現するサポートとなるでしょう。

今回ご紹介したさまざまな資料にも目を通し、自社の事業承継にM&Aが必要なのかどうかから考えてみることをおすすめします。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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