中小企業の後継者不足問題、3つの原因と5つの解決策を解説

後継者問題

2021.8.183 years前

中小企業の後継者不足問題、3つの原因と5つの解決策を解説

中小企業の後継者不足問題は深刻です。子どもや親族に後継者がいないというケースが多いようですが、「今はまだ元気だから、いずれ解決できればいい」と放置しておくのは望ましくありません。事業承継は時間がかかるものでもあるため、早いうちに対策を始めておくことが大切です。

本記事では、公的機関や民間のM&A仲介会社の力を借りるなどの方法も含めた、5つの解決策を解説します。

中小企業の後継者不足問題

団塊の世代が70代に突入し、少子化などもあり、中小企業の後継者不足問題が問題になっています。帝国データバンクの「全国・後継者不在企業動向調査(2019年※)」を紐解くと、その深刻さがよくわかります。

社長が70代の会社では39.9%が、80代以上の会社でも31.8%もの会社が「後継者不在」と回答しています。ここ5年で徐々に改善している傾向にはありますが、まだまだ多くの会社が後継者不足問題を解決できずにいるのです。国も後継者不足問題を解消すべく、事業承継を推進する施策をいくつも打ち出しています。

※帝国データバンク「全国・後継者不在企業動向調査(2019年)

後継者不足の3つの原因

後継者が不足している原因として、次のようなものが挙げられます。

1.後継者となる子どもがいない

少子化が進み、子どもの人数が少なくなっています。また、子どもが親の事業を継ぐのが当たり前という時代でもありません。そのため、経営者に子どもがいない場合や、いたとしても誰も承継しないケースが増えています。

逆に、子どもの資質・能力的に経営者に向いていないと判断した結果、後継者がいないというパターンもあります。

2.経営状態の先行きに不安がある

時代の変化が目まぐるしくなり、事業の先行きを見通すのが難しい世の中になっています。それゆえに、事業の将来性への不安から、親族以外に社内人材も含め、事業承継してくれる人がいないケースです。

また、負債を抱えていることがハードルになるケースも考えられます。会社の経営のためには、適切な範囲での借り入れをすることはよくありますが、経営者経験のない後継者候補からすると、多額の負債を引き継ぐことに抵抗感を持つかもしれません。

3.事業承継の準備が進んでいない

意外と多いのがこのパターンです。経営者としては「承継するなら自分の子ども」と願うあまり、子ども以外の承継方法を考えず、後継者不足問題を先送りしてしまっているケースです。

会議室で一人たたずむ経営者

後継者不足を解決する5つの方法

では、廃業せずに後継者不足を解決するにはどうすればよいでしょうか。次のような方法があります。

1.子ども・親族の中から後継者を見つける

理想的ではありますが、そもそも、子どもや親族から承継者を見つけることが難しいのが現状です。

2.社内人材から探す、または外部から経営者を招聘する

後継者は、自社のことをよくわかっている人材か、経営者としての能力・経験のある人材がふさわしいと言えます。社内の役員などから承継してくれる人物がいないかを探すか、業界に詳しい外部の人材を探すかして、後継者を見つける方法です。

3.M&Aの仲介業者に相談する

自社内でも外部からでも後継者候補が見つからない場合、従業員の生活のためにも事業を継続するには、M&Aで会社・事業を売却する形で後継者を見つけることになります。

M&Aの仲介業者は、事業を買収したいと考えている企業の情報を多数保有しているため、事業を引き継いでくれる候補者を見つけ出してくれるでしょう。さらに、事業譲渡契約などの難しい手続きのサポートも受けられるため、安心してM&Aを進めることができます。

4.事業引継ぎ支援センターを活用する

中小企業の後継者不足問題は、国も課題と考えています。その対策のために、各都道府県に「事業引継ぎ支援センター」を設置しています。案件に合わせて、譲渡先を紹介する、民間のM&A仲介業者へ紹介する、後継者人材バンクを利用するなどの方法でサポートしてもらうことができます。

5.事業承継のためのマッチングサイトを利用する

後継者やM&Aでの売却先を探すためのマッチングサイトを利用する方法です。譲渡価格などの情報を入力することでウェブ上に掲載され、購入希望者を見つけられます。

後継者不足問題には早めの対策を

「後継者がいるかどうか」という問題は、上記の方法で解決することができます。しかし、すぐに後継者が見つかるとは限りませんし、見つかったとしても、その後はいつでもすぐに引き継げるというわけでもありません。

後継者が見つかるまでに数年間、後継者に引き継ぐ準備などで数年間・・・と、年単位でかかってしまうものです。特に、親族や社内人材が後継者となる場合は、経営者としての教育をする期間も含めると、10年ほどかかることもあるでしょう。

後継者を探し始めるのに早すぎることはありません。「まだ後継者は探さなくても大丈夫だろう」と思わず、少しでも早いうちに後継者問題を解決することをおすすめします。

おわりに:M&Aの活用も検討してみては

自社の後継者問題を解決するためには、「いずれ候補者が見つかるだろう」と受け身でいるのではなく、自分から探しに行く姿勢が大切です。また、自分の周辺だけにこだわらず、公的機関やM&A仲介会社のネットワークも活用して、幅広く探すことで後継者が見つかりやすくなるでしょう。

従業員の生活にも影響を与える廃業を避けるためにも、早めに行動して後継者問題に備えておきたいものです。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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