不動産M&Aの特徴とメリット・デメリット、注意したいポイントを解説

業界別M&A

2022.2.229 months前

不動産M&Aの特徴とメリット・デメリット、注意したいポイントを解説

不動産M&Aとは、「不動産の取得を主目的とするM&A」です。廃業を考えている経営者の税負担を軽減することができるため、廃業の代わりに検討する経営者もいるようです。ただ、不動産売買ではなくM&Aであるため、通常の廃業とは異なる専門知識が不可欠です。本記事では、不動産M&Aの特徴、メリット・デメリット、注意点などについて解説します。

不動産M&Aの特徴

不動産M&Aとは、M&Aの中でも「主目的が不動産取引であるタイプのもの」を言います。M&Aなので、株式譲渡や事業譲渡の形で会社や事業を譲り受けますが、その事業を手に入れることが一番の目的ではなく、会社が保有している不動産を手に入れることを主目的としています。

不動産M&Aは、廃業を考えている経営者が活用できる方法でもあります。その場合は、株式譲渡で会社の権利関係も含めて包括的に売却されるのが一般的です。また、不動産M&Aでは事業そのものが目的ではないため、買収後に事業は整理されるケースも少なくありません。

事業承継とM&A

以前は「M&Aは大企業がするもの」というイメージがありましたが、近年では中小企業のM&Aも増加傾向にあります。その背景にあるのが、事業承継問題です。少子高齢化が進んだことや経済の先行き不透明感などから、後継者不足に悩む経営者が増えており、政府もそれを問題視しています。後継者不足に悩む会社が次々と廃業してしまうと、日本経済にも悪影響を及ぼしかねないため、事業承継に関するさまざまな支援を打ち出しているのです。

そんな事業承継問題を解決するための1つの手段がM&Aです。政府が、M&Aも含めた事業承継に積極的な支援をしていることもあり、中小企業のM&A件数も増加傾向してきています。

不動産を所有している会社が廃業する場合の問題点

会社を廃業する場合は、さまざまな手間やコストがかかります。中でも、含み益のある不動産を所有している会社の廃業では、かなり大きな税負担をしなければならないケースもあるのです。

廃業するには、まず、会社が所有している資産を現金化して負債を返済し、残った分が投資家(経営者)の取り分となります。会社所有の資産を現金化するときに利益が出れば、会社の利益として計上され、法人税の課税対象となります。そして、投資家の取り分は、資本金よりも大きい部分については、個人の所得税(みなし配当として20.42%の源泉徴収義務が発生)の対象となります。

通常、機械や設備といった資産を現金化して利益が出ることは、ほとんどありません。しかし、不動産を所有している場合は、不動産価格が値上がりしていて、利益が生じることもあるでしょう。特に業歴が長く、かなり昔から土地・建物を所有していた場合には、多額の値上がり益が発生することも考えられます。

その結果、廃業して手元にお金が残るとしても、不動産の売却益に実質的には二重で課税されている形になってしまうのです。

不動産M&Aのメリット

不動産M&Aのメリットは、大きく次の2点が挙げられます。

メリット① 廃業よりも税負担を抑えられる可能性がある


不動産を所有している会社を廃業する場合、前述の通り、不動産の売却益が法人税の課税対象となり、残余財産の分配で所得税が課税されます。

しかし、廃業する代わりにM&Aで株式を譲渡した場合は、株式の譲渡益に対しての所得税・住民税(20.315%)だけがかかります。不動産の含み益が非常に大きくなっている場合は、かなりの節税効果が生まれます。

メリット② 不動産売買にともなう登記費用などが不要

不動産M&Aでは、不動産の所有者は法人のままで変わりません。そのため、不動産登記をする必要がなく、登記費用が不要です。不動産売買にともなう仲介手数料も必要ありません。

ただし、M&Aの成功報酬は必要になるため、節税効果とその他の費用を含めて、総合的にメリットが大きいかどうかを確認しておきましょう。

不動産M&Aのデメリット

一方、デメリットとしては、次の2点が挙げられます。

デメリット① 通常の廃業手続きよりも時間や手間がかかる

廃業する場合は、不動産を売却して会社清算の手続きを行います。不動産会社に依頼して、広く買い手を探し、売却完了後、速やかに会社を清算することができます。

しかし、不動産M&Aを活用する場合は、買い手が限定されてしまいます。というのも、M&A交渉は水面下で行われるものであり、広く買い手を探すことができないためです。また、不動産を購入したい個人も売却対象から外れてしまいます。

デメリット② 買い手側が事業のリスクを負うことになる

廃業の代わりに行う不動産M&Aの場合、不動産だけを取引するのではなく、会社そのものを事業も合わせて譲渡することになります。そのため、買い手側は事業を引き継ぐリスクを負わなければなりません。買い手側が引き継いだ事業をから撤退するとしても、その撤退コストが必要です。M&A交渉において、その部分も含めた価格交渉がなされることでしょう。

不動産M&Aで注意したいポイント

不動産M&Aを行う上で、売り手・買い手の双方が注意しておきたいポイントには、次のようなものがあります。

売り手が注意したいポイント

不動産M&Aが完了するまでには、かなりの時間がかかります。不動産を売却する場合、適正な売却希望価格が設定されていれば、数か月から半年程度で買い手が見つかることが多いでしょう。早く廃業したいのであれば、価格を引き下げることで、買い手を見つけやすくすることも可能です。

しかし、M&Aでは、買い手が見つかるまでしばらくかかるうえ、見つかってからも、デューデリジェンスや条件交渉等を経て契約が成立するまで、半年から1年程度かかります。中には、買い手が見つからないケースもあります。

買い手が注意したいポイント

不動産M&Aは魅力的な不動産が手に入る機会になるのも事実ですが、売り手側の事業を引き継ぐリスクが生じます。買収後に事業を清算するとしても、不動産だけでなく事業の価値もしっかりと見極めて条件交渉をしなければなりません。また、自社の本業とは全く関係のない事業を引き継ぐ場合は、事業運営ノウハウなどの問題も出てくる可能性があります。

売り手・買い手ともに注意したいポイント

不動産M&Aは、M&A仲介業者などのアドバイザーのサポートのもとで行われます。しかし、不動産を目的とするM&Aのため、不動産の取引に詳しい業者でないと適切な条件交渉が難しくなってしまうかもしれません。

M&Aアドバイザーに相談する際に確認しておきたいこと
上記のようなメリット・デメリット・注意点から、不動産M&Aを検討し、アドバイザーに相談する場合は、次のような点を見極めるようにしましょう。

通常のM&Aに加えて、不動産に関する知識も豊富であること
M&Aの譲渡価格を決めるときには、事業の価値だけでなく不動産の価値も正確に算定できなければなりません。アドバイザー自身または提携している専門家が、不動産についての深い知見を持っていることが求められます。

買い手を見つけられるだけの広いネットワークを持っていること
不動産M&Aでは、簡単に買い手を見つけられるものではありません。事業を引き継いでくれる同業者などに限定せず、不動産だけを取得したいと考えている事業者も買い手候補となります。売り手側のニーズを理解したうえで、幅広いネットワークで買い手候補を探すことができるアドバイザーかどうかを確認するようにしましょう。

おわりに

不動産M&Aは、会社の事業ではなく、会社が保有している不動産を主目的としたM&Aです。廃業を考えている経営者の税負担を軽くする目的でも活用されています。しかし、M&Aであるため、買い手を探すのが簡単ではなく、デューデリジェンスや契約に時間がかかってしまうものでもあります。

廃業以外の選択肢として検討する場合には、時間をかけてじっくり進められる余裕が必要です。早めに専門家に相談して、不動産M&Aが実現できそうかを確認しておくのが良いでしょう。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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