中小M&Aガイドラインをわかりやすく解説、チェックすべき6個のポイント

M&Aの基礎

2022.1.129 months前

中小M&Aガイドラインをわかりやすく解説、チェックすべき6個のポイント

中小M&Aガイドラインは、2020年に中小企業庁が策定したもので、中小企業のM&Aをより円滑に進められるように支援することが目的の文書です。中小M&Aガイドラインには、中小企業経営者がM&Aを検討する場合に知っておきたい情報がたくさん書かれており、アドバイスを求める専門家選びのために必要な知識も得られます。
そこで今回は、事業承継を考える中小企業経営者向けに、チェックすべき6個のポイントと合わせて、中小M&Aガイドラインをわかりやすく簡単に解説します。

中小M&Aガイドラインとは

「中小M&Aガイドライン(※1)」とは、中小企業庁が2020年3月に策定した、中小企業におけるM&Aが円滑に進められるよう支援するためのものです。

中小企業の事業承継に関するガイドラインとして、2015年に「事業引継ぎガイドライン」が策定されていましたが、第三者に事業を承継するためのものとして全面改訂されたものが中小M&Aガイドラインです。

このガイドラインが作られた背景は、M&Aが事業承継に必要な手法の1つであるものの、中小企業経営者にはM&Aに関する知見を持つ人が少なく、また、M&Aで事業を第三者に売却することに抵抗がある人も少なくないためです。中小企業経営者が知っておくべき、M&Aに関する知識や情報を詰め込んだ内容となっています。

その一方で、中小企業のM&Aを支援する仲介業者や金融機関が、M&Aの専門知識を持たない中小企業に対してどのような支援をするべきかという「支援機関としての基本姿勢」もまとめられているのが特徴です。
M&Aの支援機関にはどういったところがあり、どんな対応が求められているのかを知るために、こちらも目を通しておきたい内容となっています。

※1中小企業庁 2020年3月「中小M&Aガイドライン‐第三者への円滑な事業引継ぎに向けて‐

中小M&Aガイドラインの概要

中小M&Aガイドラインは、中小企業経営者向けの第1章「後継者不在の中小企業向けの手引き」と、支援機関向けの第2章「支援機関向けの基本事項」とに分かれています。

中小企業経営者向けの第1章は、M&Aの基本的な事項や手数料の目安などがわかります。はじめに、さまざまなケースでの中小企業のM&A事例が紹介されています。事例の直後に書かれている譲り渡し側にとっての基本姿勢と留意点をあわせて読むことで、中小企業がM&Aで事業を引き継ぐことを、より身近に感じることができるでしょう。

次に、中小企業のM&Aの一般的な流れから、各プロセスで確認すべき事項についてもまとめられています。また、どのような支援機関があるか、着手金や成果報酬など手数料の考え方についても書かれています。

中小M&Aガイドラインの本文とは別に用意されている参考資料(※2)には、事例の概要だけでなく、秘密保持契約書・基本合意書・株式譲渡契約書などの雛形も用意されています。

支援機関向けの第2章は、中小企業のM&Aを支援する上で重要な基本姿勢や、各支援機関に求められる役割や連携についてまとめられたものです。中小企業の経営者も目を通すことで、政府が求める中小企業のM&Aのあるべき姿を知ることができ、支援機関を見極める判断材料とすることができるでしょう。

※2中小企業庁 2020年3月「中小M&Aガイドライン参考資料

中小M&Aガイドライン遵守宣言とは

中小M&Aガイドラインは、M&Aの支援機関に向けて作成されているものでもあります。公的機関である全国48ヶ所の事業承継・引継ぎ支援センター、そして同センターに登録している支援機関に対しては、このガイドラインの遵守が義務付けられています。また、その他の支援機関にも遵守を求めています。

それを受けて、民間のM&A支援業者には、ガイドラインにのっとった支援をしていることを表明するために、「中小M&Aガイドライン遵守宣言」を出しているところもあります。中小M&Aガイドライン遵守宣言を公表している支援機関は、中小企業向けのM&Aにも力を入れている目印にもなるでしょう。

中小M&Aガイドラインでチェックすべき6個のポイント

中小M&Aガイドライン読むにあたりチェックしておきたいポイントを6つ紹介します。

1.譲り渡し側にとっての基本姿勢と留意点(P.22~25)
M&Aをした結果、オーナーである経営者は、会社との関係はなくなります。しかし、会社と従業員・取引先などとの関係は続くため、その影響も含めて考えなければなりません。その他に、早期に判断しなければならないことや秘密保持の徹底などについても重要なポイントとして書かれています。

2.事前準備と支援機関への相談(P.25~29)
中小企業経営者がM&Aの意思決定をするのは簡単ではありません。M&Aの支援機関は、その判断のサポートも行なっています。また、株式の整理・集約、後継者が本当にいないのかどうかや、自身が引退した後のビジョンなどについても考えておく必要があるでしょう。

3.手数料について(P.44~49)
M&Aに関する手数料にはさまざまなものがあります。また、支援機関共通の決まった手数料体系があるわけではないため、その基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。

4.M&A支援機関の基本姿勢(第2章)
第2章にまとめられている内容ですが、支援機関に依頼する側としても知っておきたい内容です。中小企業経営者向けに書かれた第1章と比較すると、専門用語が並んでいて分かりにくいかもしれませんが、最適な支援先を見つけるための知識にもなります。

5.事例の概要(参考資料)
参考資料の事例概要には、どういったことが理由で事業承継がうまくいかなかったのか、その要因をM&Aでどのように解決できたのか、といったことが簡潔に書かれています。M&Aは、譲渡される会社に同じものがないため、2つとして同じ事例がないとはいえ、そこから学ぶべきことはたくさんあります。事例の概要を読むことで、多くの中小企業が抱える共通の問題点を知ることができるでしょう。

6.契約書等のサンプル(参考資料)
中小M&Aガイドラインの参考資料に準備されている契約書等のサンプルです。ただし、これをそのまま契約書として使うのは望ましくありません。個別の案件に合わせて、必要に応じて修正が必要ですので、弁護士等の専門家に相談するようにしてください。

おわりに:中小企業のM&Aに必読のガイドライン

中小M&Aガイドラインは、M&Aも含めた事業承継を検討している経営者にとって必読のガイドラインと言えます。ただ、M&Aは短期間で簡単にできるものではありません。ある程度まとまった準備期間が必要ですし、M&A以外の社内承継と同時に検討しはじめることが重要です。

事業承継問題は、可能な限り早い段階から、M&Aを含めた幅広い選択肢でじっくり検討することが重要です。後回しにしていると、取りうる選択肢が減ってしまい、最悪の場合は廃業以外に手段がないケースにもなってしまいかねません。事業承継を意識するようになったときには、中小M&Aガイドラインに、少しでも早く目を通しておくのがよいでしょう。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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