デューデリジェンスの役割とは?M&AにおけるDDの注意点

M&Aの基礎

2021.12.157 months前

デューデリジェンスの役割とは?M&AにおけるDDの注意点

デューデリジェンスは、買収対象企業の企業価値を評価するために行う調査です。さまざまな側面から調査を行い、適正な価格を見定めるだけでなく、統合後のシナジー効果を分析することにもつながります。

本記事では、M&Aの成否を左右する重要なプロセスでもあるデューデリジェンスについて、どのような内容の調査をするのか、また、その際の注意点についてまとめました。

デューデリジェンスとは

「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」とは、買収対象企業の価値を評価する手続きのことで、事業活動やリスクの調査を行います

「Due」は「正当な、当然の」、「Diligence」は「努力」という意味で、「企業が社会的責任を果たすための注意義務」という意味もありますが、ここではM&Aに関する「企業価値評価」に絞って解説します。

デューデリジェンスの役割

M&Aは、多額の投資をする非常に重要な経営判断で、失敗しないよう最善の努力をしなければなりません。そのためには、買収対象の企業を適正に評価する必要があり、デューデリジェンスを通して詳細な調査・分析をする必要があります。

一般的には、基本合意契約を締結した後に行われるもので、買収対象となる企業の収益性や将来性だけでなく、リスクまで調査します。そうすることで、買収によるシナジー効果や不確実性のあるリスクまでも加味した「最終契約にあたっての適正な買収価格」を算定することができます。

M&Aで非常に重要なプロセスであり、デューデリジェンスがM&Aの成否を左右すると言っても過言ではありません。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスは、さまざまな角度から行われます。事業の成果が、さまざまな要因で左右されるためです。具体的には、次のようなものが挙げられます。

(1)事業デューデリジェンス

買収対象企業の収益性や将来性を調査するものです。収益性や将来性を判断するためには、買収対象企業だけを調査しても意味がありません。市場環境や競合他社の強み・弱みまで分析する必要があります。競合他社の特徴をおさえることは、自社と買収対象企業が一体となることでシナジー効果が生まれるかどうかを判断する材料にもなるでしょう。

(2)財務デューデリジェンス

買収対象企業の財務状況を調査します。財務状況を見るためには、財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)を分析することから始めますが、表面的な分析に終わらせてはいけません。不正取引・不正経理が行われてはいないかという点や、将来顕在化する可能性のある簿外債務・偶発債務などまで調査して、リスクを洗い出すことが重要です。

(3)税務デューデリジェンス

買収対象企業の税務リスクを調査するもので、財務デューデリジェンスと一体で行われる場合もあります。不正経理だけでなく、税務署の認識と異なる経理処理をしている場合にも、想定外の税負担やペナルティが課されるリスクがあります。過去の申告書や税務調査の状況を把握し、課税関係を分析します。

(4)法務デューデリジェンス

買収対象企業の法律上の問題を調査します。コンプライアンス体制をはじめ、取引先等との債権・債務の関係も調査し、不透明な意思決定・取引がないかを確認するのが目的です。将来の訴訟リスクや風評被害のリスクを事前に把握することができます。

(5)人事デューデリジェンス

買収対象企業の人事全般の調査を行います。M&Aがきっかけで優秀な人材が流出してしまうリスクがあります。人事制度やマネジメント体制を調査することで、買収後の待遇・制度設計やPMIに活かして、人材流出やモチベーションの低下を未然に防ぐことなどが目的です。

主なデューデリジェンスの種類は以上の通りですが、必要に応じて、他の側面からのデューデリジェンスも行われます。詳細は省略しますが、「IT」「知的財産」「顧客」「技術(無形資産)」などが挙げられます。「M&Aの成否に関係するであろうことについては、すべてデューデリジェンスをする」というスタンスが大切です。

M&Aのデューデリジェンスの注意点

デューデリジェンスを行う際に注意すべきポイントをいくつか紹介します。

(1)実行すべき内容を検討する
デューデリジェンスは詳細に行うに越したことはありませんが、すべての項目を徹底的に調査・分析することは現実的には不可能です。1~2か月程度の期間を定めて行われるため、どのような項目について調査するのか優先順位をつけ、計画的に行いましょう。

(2)買い手と売り手が協力して行う
M&Aの買い手は「少しでも安く買いたい」、売り手は「少しでも高く売りたい」と考えるもので、利益が相反しています。しかし、買い手があら捜しをして買い叩こうとする姿勢だったり、売り手が不利な情報をかたくなに隠して高く売りつけようとする姿勢だったりすれば、決裂するかM&A成立後にトラブルが発生するかもしれません。互いに協力し合って納得いく適正価格でM&Aが成立するようにしましょう。

(3)買収にあたってのことだけでなく、統合後の課題も見つけることが大切
M&Aは譲渡契約成立がゴールではありません。統合後の戦略や社内のケアが適切に行われてこそ、シナジー効果が発揮され、成功と言える状態を作ることができます。

だからこそ、デューデリジェンスを通して、統合後の課題を見つけることも大切です。課題を見つけることで、PMIの内容に反映させましょう。場合によっては、株式を取得するのではなく事業譲渡にするなど、M&Aスキームを変更する決断をしなければならないこともあるでしょう。

おわりに

デューデリジェンスは、買収対象企業の調査をして適正な企業価値を算定するものであり、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。さまざまな側面から深い内容まで見て、統合後の課題を見つけることもできます。

しかし、幅広い専門的な知識が必要なので、顧問税理士だから財務・税務デューデリジェンスができる、顧問弁護士だから法務デューデリジェンスができるとは限りません。M&A仲介業者や金融機関などのルートで、各方面のM&Aに精通した専門家の力を借りることも大切です。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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