サイトM&A(サイト売買)をするメリット・デメリットと注意点

M&Aの基礎

2022.1.72 years前

サイトM&A(サイト売買)をするメリット・デメリットと注意点

インターネットが生活の隅まで浸透し、ECサイトやアフィリエイトサイトも増えています。そんな中で注目されているのが、ウェブサイトを売買する「サイトM&A」です。運営サイトを手放して収益を得る、サイトを入手して立ち上げの手間を省けるといったメリットがありますが、その一方でデメリットや注意すべき点もあります。今回は、サイトM&Aについて簡単に解説します。

サイトM&A(サイト売買)とは

サイトM&Aとは、ウェブサイトを売買することです。売買の対象となるサイトは何かしらの収益を上げているものであり、その「サイトを運営する事業」を譲渡するものと言えます。
モノやサービスを販売するECサイトや、情報を提供して広告収入を得るアフィリエイトサイトが売買されています。

通常のM&Aとの違いは?

通常のM&Aでは、経営権そのものを売買する「株式譲渡」や営む事業を売買する「事業譲渡」などがあります。しかし、ウェブサイトは、それ自体は法人ではなく、会社や個人事業主が営む事業です。そのため、サイトM&Aは「事業譲渡」のような形が一般的と言えるでしょう。

【売り手】サイトM&Aをするメリット・デメリット

サイトの売り手側がM&Aをするメリット・デメリットには、次のようなものが挙げられます。

メリット1.将来の収益を今まとめて受け取れる
サイトが売買される価格は、さまざまな事情によって変化はありますが、「2年(20~30か月)分程度の収益」が目安と言われています。

メリット2.複数サイト運営している場合、選択と集中ができる
複数のサイト運営をしている場合や、会社の1事業としてサイト運営をしている場合では、事業を残したいものと切り離したいものに分ける「選択と集中」が可能です。採算の良くないサイトを手放したりすることで、サイト運営の手間やコストを削減できるなどの効果があります。

デメリット1.買い手・売り手のみで取引されることが多く、トラブルになりやすい
通常のM&Aと異なり、サイトM&Aを専門家に仲介してもらうケースがあまりありません。そのため、契約条件や引き継ぐ際の手続きなどでトラブルが起こりやすいのが現状です。自分の方だけでも専門家に仲介してもらうことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

デメリット2.購入希望を装った悪質な買い手が現れるかもしれない
ウェブサイトは、会社と比較して、ノウハウが手に入れば模倣しやすいビジネスです。そのため、最終的に購入するつもりがないのに、購入する風を装って、サイトが収益をあげられているノウハウを聞き出そうとする人もいるそうです。サイトM&Aのマッチングサイトなどでは禁止されていることですが、そのような被害が生じているのも事実です。

【買い手】サイトM&Aをするメリット・デメリット

サイトの買い手側がM&Aをするメリット・デメリットには、次のようなものが挙げられます。

メリット1.すでに収益が出ているサイトを手に入れられる
ECサイトやアフィリエイトサイトで収益をあげられるようにするには、商品やコンテンツを充実させ、SEO対策などを施していかなければなりません。
サイトM&Aで買収すれば、その分の初期費用はかかるものの、すでに収益が出ている状態からウェブサイト事業を始めることができます。

デメリット1.自由度が低い
イチから立ち上げたウェブサイトと異なり、自由度が低いのがデメリットです。買収後に手を加えるのは自由ですが、何度も訪問してくれる人や検索エンジンは、買収前のサイトを評価しています。それを一気に変えると収益が上がらなくなるかもしれませんので、慎重に少しずつ、アクセスや売上に悪い変化が起きていないかを確認しながら手を加えるようにしましょう。

デメリット2.これまで通りの収益が上がり続けるとは限らない
サイト運営者が変われば、同じような方法で運営しているつもりでも、微妙な差が原因で収益性が変わることがあります。買収後にうまく運営できるかでサイトM&Aの成果も変わることを理解しておきましょう。

デメリット3.買い手・売り手のみで取引されることが多く、トラブルになりやすい
買い手側のデメリットと共通です。

サイトM&Aの進め方

マッチングサイト経由でのサイトM&Aの進め方を簡単に説明します。

【売り手】

1.サイトM&Aマッチングサイトに登録
売りに出したいウェブサイトの情報を登録しますが、審査を通過すればマッチングサイト上に情報が掲載されます。

2.仲介会社との契約
専門家のサポートを受ける場合は、M&A仲介会社と契約を結びます。その際、情報漏洩等を防ぐために秘密保持契約(NDA)も締結します。

3.交渉・譲渡契約
買い手候補があらわれたら、条件の交渉を進め、合意に至れば譲渡契約を締結します。

【買い手】

1.サイトM&Aマッチングサイトに登録
サイト購入を希望する場合は、特に審査はありません。

2.案件を探す・仲介会社との契約をする
購入したいウェブサイトを探します。それと合わせて、専門家のサポートを受ける場合には、M&A仲介会社と仲介契約・秘密保持契約を締結します。

3.交渉・譲渡契約
売り手側と条件交渉を進め、合意に至れば譲渡契約を締結します。

サイトM&Aをする際の注意点

サイトM&Aで注意しておきたいのが、「引継ぎをスムーズに進めること」です。

ウェブサイトは、利用者が他のサイトなどに流れやすいと言えます。そのため、引継ぎがうまくいかずサイトに不具合やトラブルが生じてしまうと、利用者が他サイトで買ったり情報収集したりしてしまい、利益を出す機会を失ってしまいます。

そういった問題が起きないよう、不具合やトラブルを防ぐため、次のような点に気をつけましょう。

1.ドメイン・サーバーの移管手続き
ウェブサイトのドメインを移管するのに1週間程度かかるため、サイトが譲渡される日に移管できるよう準備をしておきましょう。サーバーを別のサーバーに移す場合も、余裕をもって手続きを進めましょう。

2.著作権の保有者を確認する
ウェブサイト内のコンテンツ(写真や記事)の所有権・著作権を確認しておきましょう。すべてをサイトの所有者が持っているのであれば、その権利ごと譲渡してもらえば済むのですが、そうでない場合は、所有者が変わった後も掲載できるように所有権者・著作権者からの許可を取る必要があります。

3.運営方法の引継ぎもしっかりと行う
ウェブサイトの運営では、サイト利用者に不便にならないように注意を払いながら、更新作業やメンテナンスを定期的に行っています。こういったノウハウを共有してもらい、買収後もスムーズな運営が続けられるようにしましょう。

また、特にECサイトの場合、サイト利用者からの注文や問い合わせに対応しなければなりません。売り手側からノウハウを引き継ぎ、これまでの体制を維持・発展させられるようにしましょう。

おわりに

ウェブサイトの売買も、事業そのものを取引しているため、M&Aの一種だとも言えます。しかし、サイトM&Aが行われるようになって間もないため、ルールが整備されていなかったり、トラブルが起きやすい環境だったりするのも事実です。「たかがウェブサイトじゃないか」と考えてしまわず、収益を生むビジネスの取引だと認識して、細心の注意を払って手続きを進めましょう。トラブルを未然に防ぐために、必要に応じて専門家を活用するのもひとつの手だと言えます。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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