スモールM&Aと通常M&Aの違い、契約前にチェックしておきたいポイントを解説

M&Aの手法

2021.12.241 month前

スモールM&Aと通常M&Aの違い、契約前にチェックしておきたいポイントを解説

スモールM&Aとは、名前の通り「小規模のM&A」です。まだ件数は少ないですが、中小企業の事業承継問題もあり、これから増加してくると考えられています。ただ、スモールM&Aは、同じM&Aでも、ある程度の規模がある会社のものとは特徴が異なる部分もあります。

そこで本記事では、スモールM&Aと通常のM&Aとの違いや、契約にあたってチェックしておきたいポイントを解説します。

スモールM&Aとは

スモールM&Aは、小規模の事業を行っている会社が対象のM&Aを指します。何をもって小規模とするか、明確に定義があるわけではありませんが、売上・純資産や譲渡金額などが比較的小さいM&A(※)です。

近年、後継者不足問題の解決策として、社外の人材に会社を売却するM&Aによる事業承継を検討するも経営者も増えてきました。そういったケースでは、小規模で事業を行っている場合が多く、スモールM&Aとなることも少なくありません。

小規模のM&Aであるため、譲渡金額が小さく、買収によって会社を成長させる時間を買いたい企業だけでなく、起業したいと考えている人が買い手となるケースもあります。

なお、会社全体がM&Aの対象になっているケースだけでなく、一部の事業や店舗だけを対象とするスモールM&Aも行われています。

※平成29年に中小企業庁が発表した「中小企業の事業承継に関する集中実施期間について(事業承継5ヶ年計画)」では、M&Aの小規模ディールを「年商3億円以下の企業(手数料1,000万円未満)」としています。

参考:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170707shoukei1.pdf

通常のM&Aとの違い

M&Aは、譲渡価格決定のためのデューデリジェンスや契約書の作成に専門的な知識が欠かせません。そのため、M&A仲介業者などとアドバイザー契約をして、専門家にサポートしてもらうのが一般的です。

しかし、スモールM&Aの場合は、M&Aの専門業者では対応していないことが多いようです。その理由は、依頼者側にとって報酬が高くなってしまうこと、業者側にとっても割に合わないビジネスであることなどが挙げられます。

このような理由で、スモールM&Aをサポートする業者はあまりありません。まだ数は少ないですが、M&Aの支援を兼業しているコンサルタントや士業にサポートを依頼するか、インターネットのM&Aマッチングサイトを利用することになるでしょう。

ただ、政府は小規模M&Aの支援に力を入れており、全国に「事業承継・引継ぎ支援センター」を設け、中小事業者の事業承継に関する相談に対応しています。また、税理士や会計士が参入してくるように促進する方向性を打ち出しているため、今後、小規模M&Aのサポートを行う事業者は増えてくると考えられます。

スモールM&Aのメリット・デメリット

スモールM&Aのメリット・デメリットには次のようなものが挙げられます。

メリット

スモールM&Aは、通常のM&Aと比較すると、交渉を円滑に進めやすく、契約成立までの期間が短く、譲渡価格やM&A仲介業者などへの報酬額も小さいというメリットがあります。とはいえ、譲渡価格に報酬を加えた総額で考えると、通常のM&Aと比較して割高だと感じるかもしれません。

M&Aの手数料体系については、こちらの記事をご覧ください。

買い手側にとってのメリットとしては、売り手側がもつ経営リソースをそのまま引き継げることが挙げられます。営業範囲を拡大したいと考えている企業にとっては、新たに拠点を作って、人員を配置して営業活動を行うと言う時間と手間が省けます。起業したいと考えている人にとっても、会社を設立するためと同じくらいの資金で、すでに事業を行っている会社を手に入れることが可能です。

デメリット

M&Aの相手とマッチングするのが簡単ではないのがデメリットです。まだまだスモールM&Aが一般に浸透していないこともあり、買い手候補・売り手候補となるマッチング相手が少ないのが現状です。また、候補者が見つかっても、魅力的な相手ではなく契約成立までたどりつかないこともあるでしょう。

起業の手段として小規模M&Aの買い手になる人にとってのデメリットは、「M&Aである」ということです。自分で起業する場合と比較して、その会社が行ってきた経験があるからこそ、自由度が低くなってしまいます。M&Aが成立すれば終わりではなく、事業をスムーズに引き継いで軌道に乗せていかなければなりません。

スモールM&Aの注意点・課題

このようなメリット・デメリットがあるスモールM&Aですが、次のような点に注意しましょう。

スモールM&Aでは、まだまだマッチング相手が見つかりやすい状態ではありません。なかなか相手が見つからなかったり、マッチングできなかったりすることもあるでしょう。
インターネットのM&Aマッチングサイトを利用した場合、1つの売却案件に複数の購入希望者が現れるケースもありますが、その中に、売却先として魅力的な相手が必ずいるとは限りません。

もし、M&AマッチングサイトでアドバイザーをつけずにスモールM&Aをしようとしている場合は特に注意が必要です。アドバイザーがいれば、譲渡価格やその他の条件について適切な内容になっているかを確認してもらうことができますが、アドバイザーがいない場合は、それらの確認を自分でしなければなりません。M&Aの実務経験者でもなければ、譲渡対象の会社の強みやリスクなどを詳細に分析することは簡単ではありません。

契約書の内容についても、一般的なひな形を利用することはできますが、個別の案件に独特のトラブルなどを想定したものにはなっていないため、M&A成立後に思わぬトラブルが生じてしまう危険性もあると言えるでしょう。

スモールM&Aでチェックしておきたいポイント

スモールM&Aを行う場合は、通常のM&Aと比較して、取引相手についての情報が不足してしまいがちです。こちらがアドバイザーをつけて、しっかりとヒアリングしようとしても、相手側が情報提供できる体制になっていない可能性もあります。少しでもリアルな情報を集められるよう、売り手側が保有している資産などを、実際に足を運んで見に行くなど、慎重すぎるくらい詳しく確認するようにしましょう

また、契約成立後の引き継ぎがスムーズに進められるようにすることも重要です。引継ぎがうまくいかなければ、買い手にとっては事業がうまくいかないリスクにつながり、売り手側の従業員や取引先にとっても幸せなM&Aとはならなくなってしまいます。引き継ぎについての条件も詳細に決めておき、お互いにとって満足のいくM&Aが実現できる体制を整えたうえで契約したいところです。

おわりに

スモールM&Aは小規模な事業者を対象とするM&Aです。小規模事業者の事業承継問題もあり、これから活発になっていくと考えられるため、比較的少額でビジネスの拡大や起業がしやすくなってくると考えられます。

しかし一方で、まだまだ小規模M&Aが一般的になってきていないために、マッチング相手が見つかりにくいことや、M&Aに必要な情報が収集しにくいことなどの注意点もあります。小規模であってもM&Aには変わりありませんから、慎重に判断して、より満足のいくM&Aが実現できるようにしましょう。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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