M&Aの代表的手法「合併」の基礎、買収や経営統合との違いを解説

M&Aの手法

2021.9.93 years前

M&Aの代表的手法「合併」の基礎、買収や経営統合との違いを解説

「合併」はM&Aの代表的な手法です。買収や経営統合と異なり、別々の会社が一体化するのが大きな特徴です。事業拡大やシナジー効果など、一体化するからこそのメリットがある一方で、組織の統合が課題となりやすい手法とも言えます。

本記事では、合併についての基礎的な知識として、どのような合併方法があるのか、合併の目的や組織統合の重要性について簡単にまとめました。

企業の合併とは?

「合併」はM&Aの代表的な手法で、複数の会社が一体となるものです。その際、合併先に引き継がれることになった会社は、法人格を失います。

これと混同しやすい手法が「買収」や「経営統合」です。まずは、これらとの違いから確認しておきましょう。

買収との違い

買収は、ある会社が別の会社の経営権を取得することです。簡単に言えば、「ある会社が別の会社の子会社になること」で、買収されても法人格は残ります。

経営統合との違い

経営統合は、「持株会社化」を進める手法です。統合しようとする複数の会社が、新設される会社の100%子会社になります。こちらも、子会社として法人格が残ります。

企業合併のイメージ

合併を行う目的

合併は、単純に考えれば、会社の規模が大きくなります。それによって起きるメリットが、合併をする目的にもつながります。主な目的(メリット)には、次のようなものが挙げられます。

1.シェア拡大や多角化ができる
同業者と合併すれば、自社の市場シェアが高まります。シェアが高まれば、規模の経済が働き、調達コストや製造コストの削減にもつながります。

一方、自社とは異なる事業の会社と合併することで、事業の多角化を進めることができます。

2.シナジー効果が得られる
合併する会社同士で、お互いの強みを共有するなどして、これまで単独では出せなかった成果につなげることができます。

3.管理部門等のコスト削減ができる
人事・総務・経理等の管理部門やシステム等を統合することで、さまざまな管理コストを抑えることができます。

2種類の合併形態

合併は、「どの会社を存続させるか」という観点で、2種類に分類することができます。

新設合併

新設合併は、合併先の会社を新しく設立し、合併しようとする複数の全ての会社が新設会社に引き継がれます。その際、合併する会社は消滅し、法人格を失います。

なお、新設合併では、存続会社となる新設した会社に許認可や免許は引き継がれませんので、あらためて認可や免許の手続きをしなければなりません。

新設合併は以下の記事で詳しく解説しています。

吸収合併

吸収合併は、合併しようとする会社のうち1社に、他の会社の権利・義務を包括的に引き継ぐ合併手法です。吸収する側の会社は存続し、吸収される側の会社は消滅して法人格を失います。

吸収合併は以下の記事で詳しく解説しています。

合併の流れ

合併をするための流れは、以下のようになります。

1.取締役会決議
新設合併・吸収合併のいずれの場合でも、合併する各社で取締役会の決議が必要です。

2.合併契約の締結
合併する会社間で、合併契約書を締結します。

3.株主総会での特別決議、反対株主の株式買い取り
合併をするためには、効力が発生する前日までに、株主総会にはからなければなりません。3分の2以上の賛成が必要な特別決議で承認を得ます。
その際、合併に反対した株主には株式買取請求権を与える必要があります。

4.債権者保護手続き
合併は、会社の権利・義務が包括的に引き継がれるため、債権者保護の手続きが必要です。官報公告をし、異議申し立てを受け付けます。

5.登記の変更
株主総会、債権者保護で問題がなければ、合併が成立します。その後は2週間以内に、登記の変更が必要です。消滅する会社は解散登記をします。

合併後のプロセスが最も重要

最も大切なのが、「合併後」です。合併には、事業拡大・シナジー効果・コスト削減などのメリットがありますが、これらが自動的に得られるわけではありません。合併後の取り組み次第で、効果が大きくも小さくもなるのです。

そもそも、合併する前は別の組織で働いていた人たちが、ある日突然、同じ組織で働くことになります。仕事の進め方や企業文化の違いを乗り越えてこそ、より大きな成果につながります。

新設合併であれば、合併した複数社のどこが主導権を握るのかというトラブルや、吸収合併では、吸収した側・された側で対立構造ができてしまうなどの問題が想定されます。だからこそ、PMIで統合を推進することが重要です。

PMIは、「Post Merger Integration」の略で、M&A後の統合プロセスを指します。合併する会社それぞれからメンバーを選出して、統合作業を推進するチームを作りましょう。経営体制だけでなく、業務プロセスや従業員の意識までを統合させることが、チームの任務です。

そこまで進められてはじめて、合併によるさまざまなメリットが最大化されます。

おわりに:統合後も考慮した戦略が必要

合併には新設合併と吸収合併がありますが、買収や経営統合と異なり、別の組織が一体となって事業を行っていくものです。だからこそ、シナジー効果をはじめとするメリットがありますが、その一方で、統合プロセスが課題となりやすいのも事実です。

合併を進める際には、具体的な手続きを進めながらも、どのようにして組織を統合していくのかまでを考慮した戦略が必要です。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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