M&Aの目的と効果を売り手・買い手それぞれの視点で解説

M&Aの基礎

2021.7.264 months前

M&Aの目的と効果を売り手・買い手それぞれの視点で解説

M&Aは、以前と比べて、中小企業にとっても身近なものになりました。M&Aはさまざまな経営課題を解決できる手段のひとつなのですが、どのようなことが実現できて、どのような効果があるのかをしっかりと理解している経営者の方はあまり多くないようです。

買い手・売り手それぞれにとって、M&Aを通してどのようなことができるのか、注意しておきたい点にはどのようなものがあるのかを簡単にまとめました。

売り手がM&Aをする4つの目的と効果

M&Aで売却する目的と効果には、次のようなものが挙げられます。

1.本業の基盤を強化する

自社の事業の中で競争力の低い事業をM&Aで売却することで、その資金を競争力ある事業に集中させることがひとつの目的です。いわゆる「選択と集中」をするもので、不採算事業や低収益事業を切り離して、より収益力を高めることにつながります。

2.より事業成長させられる会社へ譲渡する

本業の基盤を強化するという1の目的を、切り離される事業の側から見ると、自社では競争力を高められなかった事業を別の会社に譲渡することで、より成長させることが期待できます。譲渡する事業を担当する従業員の雇用を守ることにもつながると言えるでしょう。

3.廃業を回避するための事業承継手段

M&Aは事業承継手段としても優れた手法です。従業員とその家族の生活を考えると、後継者がいないことが理由で廃業せざるを得ない事態は避けたいところでしょう。経営者の親族や社内の人材で後継者が見つからないのであれば、廃業を避けるために、事業を継続してくれる会社へ譲渡することには大きな価値があります。

4.創業者利益の確保

M&Aで持株を売却した場合、株主に売却代金が支払われ、創業者利益を確保することができます。さらに、会社の負債ごと譲渡することになるため、会社の借り入れのためにつけていた個人保証が外れるのも大きなメリットです。

買い手がM&Aをする3つの目的と効果

M&Aで事業を購入する側の目的と効果には、次のようなものが挙げられます。

1.スピーディーな成長ができる

M&Aで会社や事業を買収することで、買収元の顧客やブランド力などが手に入ります。これを自社で達成しようとすると、時間をかけて事業を育てていかなければなりません。しかも、成功するかどうかは未知数です。

許認可等が必要である新規事業であれば、許認可から事業成功までの時間的・金銭的コストを減らして参入することもできます。また、市場環境の変化に対応するために、既存事業の周辺の将来性ある事業に参入して、事業の多角化を一気に推進することができるでしょう。

このように、M&Aで途中の過程をスキップして事業を成長させられることから、M&Aは「時間を買う」と例えられることもあります。

2.ノウハウやシナジー効果を得る

M&Aで得られるのは、財務諸表に載っている有形の資産だけでなく、技術・人材・マーケティングなどのノウハウも含まれます。さらに、自社が有しているノウハウと掛け合わせて進化させるシナジー効果(相乗効果)も期待できます。

3.コスト削減

M&Aで1つの組織になれば、さまざまなコストを削減することができます。経理や人事などの重複する部門を一本化して効率化を図ったり、資材調達や製造をまとめて行うことで規模の経済が働いたりすることで、コストダウンにつなげることも可能です。

M&Aをする男性

M&Aを実施する際の注意点

上記のような効果のあるM&Aですが、大きな取引になるため、さまざまな注意点があります。

売り手側の注意点

1.成立まで時間がかかる

M&Aを希望していても、譲渡先の会社がすぐに見つかるとは限りません。見つかったとしても、その後にデューデリジェンスや条件交渉をしなければならず、長い場合には、譲渡が完了するまで数年かかることもあります。

2.従業員や取引先のトラブルに注意

経営者が変わることで、経営方針も大きく変わる可能性があります。その影響で、従業員の待遇が悪くなってしまったり、取引先との関係が悪くなったりする可能性も否定できません。そういったことが起きないよう、雇用条件や取引先との関係性についても事前に調整しておくことが大切です。

3.株式を譲渡した場合には税金がかかる

株式譲渡でM&Aを行った場合、譲渡所得に税金がかかります。税率は、所得税(15%)、住民税(5%)・復興特別所得税(0.315%)の合計で20.315%です。

買い手側の注意点

1.多額の資金が必要

M&Aには多額の資金が必要です。当初の予想よりも高い評価額になり、資金調達が困難になる可能性もあります。

2.企業風土の融合は簡単ではない

異なる風土の企業をひとつにするのは簡単ではありません。M&Aに成功しても、組織が一体化できず、期待通りのシナジー効果が生まれないリスクがあります。優秀な人材が流出してしまうと、M&Aの目的達成が困難になるかもしれません。こうした事態を防ぐために、事前の準備やPMIを、時間をかけて慎重に行うことが重要です。

3.想定外の事態が発覚することもある

偶発債務や簿外債務など、事前に想定されていなかったリスクが顕在化することもあります。デューデリジェンスで詳細な調査をし、より正確なバリュエーションをすることが大切です。

簿外債務とは – M&A用語

おわりに

このように、M&Aは大きな課題を解決する手段です。しかし、大きな効果が得られる分だけ、M&Aを実行するための時間的・金銭的負担も大きくなると言えます。うまくいかなかった場合のリスクも考えておかなければなりません。

だからこそ、できることや注意点をしっかりと理解し、大胆かつ慎重に進めて、M&Aの効果を最大限享受できるようにしたいものですね。

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