第三者割当増資とは?買い手・売り手のメリット・デメリットから実行までの流れを解説

資金調達

2021.9.224 weeks前

第三者割当増資とは?買い手・売り手のメリット・デメリットから実行までの流れを解説

第三者割当増資は、株式会社の資金調達手段です。M&Aや業務提携など、中小企業でもよく使われる手法ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。第三者割当増資を実行するにあたって知っておきたい、経営上・税務上の注意点についてまとめました。

第三者割当増資とは?

第三者割当増資は有償増資のひとつで、株式会社の資金調達手段に使われます。発行した新株を、特定の法人や個人などの第三者に引き受けてもらう方法です。M&Aの手法のひとつでもあり、手続きが比較的簡単であるため、スピーディーに進められます。

引受先は、自社の役員、取引のある企業や金融機関、出資をするベンチャーキャピタルなどです。新株発行をする会社の関係者であることがほとんどであるため、「縁故募集」とも呼ばれます。

事例は少ないですが、ホワイトナイトが敵対的買収から対象企業を守る際に、防衛策として第三者割当増資を使うこともあります。ホワイトナイトについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてお読みください。

発行元(売り手)のメリット・デメリット

新株の発行元である売り手にとって、第三者割当増資を使う最大のメリットは、多額の資金調達ができることです。増資であるため返済の必要がなく、その資金を事業に投資してさらなる成長を目指すことができます。また、資本金が増えることで信用力がアップし、資金調達や取引に有利に働くのもメリットです。

上述したように、M&Aの手法として使う場合、手続きが簡単なので早く計画を進行できます。スピーディーにM&Aを進めたいときは、第三者割当増資が有益な方法となるでしょう。

一方、第三者割当増資のデメリットは、既存株主の持ち分が減少(希薄化)してしまうことです。既存株主の株式を売却するわけではなく、権利が希薄化するだけなので、第三者割当増資に反対する意見が出てくる可能性があります。

この他、非上場企業の場合は増資するときの株価が公正かどうかを判断しにくいこと、資本金が増えることで税金がアップする可能性があることもデメリットとして挙げられます。

引受先(買い手)のメリット・デメリット

新株の引受先である買い手にとっての第三者割当増資のメリットは、その企業の株式を購入することで、一定割合の株式を確実に入手できる点です。そのため、M&Aや資本業務提携を目的として活用されることがあります。

デメリットは、多額の資金が必要なこと、持株比率の低下や権利の希薄化を懸念する既存株主からの反発などが挙げられます。持株比率の低下により、経営の意思決定に支障が生じる可能性も頭に入れておいたほうがよいでしょう。

株式譲渡との違い

第三者がある企業の株式を大量に購入するという意味で、第三者割当増資に似た手法として「株式譲渡」があります。ただ、この2つは、お金の動きが全く異なります。

第三者割当増資では、新株の引受によって支払われたお金は、新株発行元の企業が受け取ります。既存の株式は残したままになるので、株式を100%取得することはできません。

一方の株式譲渡は、既存株主が保有している株式を他者に譲渡するため、支払われたお金は株主が受け取ります。株主が購入した金額よりも高く売却できた場合には税金がかかります(※)。M&Aでは株式を100%譲渡するケースが大半であるため、株式譲渡は最も多く使われる手法です。

※売却したのが法人なら法人税、個人なら所得税(贈与であれば贈与税)がかかります。

第三者割当増資が行われるケース

第三者割当増資が行う場合、資金調達が第一の目的です。ただ、それ以外の目的を意識して行うケースもあります。

(1)M&A
持株比率が過半数になるように第三者割当増資をし、引受先が経営権を握るようにします。株式譲渡と異なり、発行元企業が資金調達できるので、事業再生戦略や成長戦略が描きやすくなります。

(2)資本業務提携
資金を調達しながら、取引先などとの連携強化を図ることができます。資本関係を持たない取引先と業務提携することで、企業価値の向上や事業拡大といったメリットが得られます。

第三者割当増資の流れ

第三者割当増資は、次のような流れで行われます。

第三者割当増資の手続き方法
(1)募集事項の決定
募集事項(新しく発行する株式の数や株価など)を、公開会社の場合は取締役会で、非公開会社の場合は株主総会の特別決議で決定します。

(2)割当相手に通知・割当相手からの申し込み
募集事項が割当相手に通知され、割当相手からの申し込みを受けます。

(3)割当の決定
申し込みを受け付けてから、新株を割り当てる相手と株式数を、取締役会または株主総会の特別決議で決定します。

(4)払い込み
割当先から、新株購入資金を払い込みます。

(5)株式の発行と登記
株式の発行を行い、資本金額や発行済株式総数の登記変更を行います。

M&Aにおける第三者割当増資

第三者割当増資では、持株比率は低下するものの既存株主の持ち分が残っている状態になります。

M&Aでは、売却企業の創業メンバーや役員が一定期間は経営に携わり続けるケースがよくあります。この際、第三者割当増資で出資すれば、創業メンバーや役員にインセンティブとして持株を残しておくことができ、のちに全株式を買い取って100%子会社化することも可能です。

また、完全な経営権を持つことを目的としていない場合は、第三者割当増資によって、1/3超50%未満の保有割合にして拒否権を持つ方法としても活用できます。

敵対的買収の防衛策としての第三者割当増資

第三者割当増資は、敵対的買収を仕掛けられた場合の防衛策のひとつです。ホワイトナイト(友好的買収者)を探し、そこを引受先とする第三者割当増資をすれば、敵対的買収者が経営権を握れるほどには株式を買い集めることができなくなります。

ただ、ホワイトナイトに敵対的買収を阻止してもらっても、自社の経営権を他社に渡すことに変わりありません。そもそも敵対的買収のターゲットになってしまわないように、事前に買収防衛策を準備しておくことが大切です。

第三者割当増資の税務上の取り扱い

第三者割当増資をしても、発行元は投資家から出資を受けているだけですし、引受先は出資して株式を手に入れているだけなので、通常は税金が発生することはありません。しかし、時価より低い価額での発行となった場合は「有利発行」とされ、時価との差額分が「贈与」または「経済的利益の供与」とみなされます。

課税される税金の種類は、引受先が発行元とどのような関係にあるかを元に、下記のように分類されます。

  • 同族会社の株主の親族:贈与税
  • 発行会社の役員や従業員:所得税(給与所得)
  • 上記2つ以外の個人:所得税(一時所得)
  • 法人:法人税(ただし、時価との差額が10%未満であれば有利発行とされない)

おわりに

このように、第三者割当増資は、M&Aや業務提携を通して資金調達もできる方法です。ホワイトナイトが登場するケースは少ないため、敵対的買収の防衛策として使われることは稀ですが、手段として覚えておくとよいでしょう。

既存株主との関係や税務上の注意点はありますが、企業を成長させるためのまとまった資金を集める方法としては優れた手段と言えます。

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