スクイーズアウトの4個の手法、M&Aでスクイーズアウトを使うケース

M&Aの手法

2021.12.102 months前

スクイーズアウトの4個の手法、M&Aでスクイーズアウトを使うケース

オーナー企業が迅速な経営判断ができる体制にするには、経営陣が株式の全部または大多数を握っていることが重要です。しかし、少しだけでも株式を持つ株主が何人もいると、迅速な経営が阻害されかねません。そのリスクを解消できる方法が「スクイーズアウト」です。しかし、専門知識が必要な方法であるため、まずは基本的な仕組みを理解しておきましょう。

スクイーズアウトとは

スクイーズアウトとは、特定の少数株主が保有する株式を強制的に買い取る方法です。「squeeze out」には英語で「絞り出す、押し出す」という意味があり、特定の株主を締め出す効果があることをスクイーズアウトと呼んでいます。

通常、株式の譲渡は買い手と売り手の合意によってのみ成立します。しかし、少数株主を排除できるようにすることのメリットもあるため、要件を満たせば、スクイーズアウトによる強制的な株式の買い取りが会社法によって認められています。

スクイーズアウトのメリット・デメリット

スクイーズアウトのメリット・デメリットには、次のようなものがあげられます。

【メリット】
1.株式を集約させて、経営陣の意思決定を迅速にすることができる

株式が分散していると、経営陣が迅速に意思決定できなくなることがあります。2/3以上の株式を握っていれば、株主総会の特別決議を可決することはできますが、議題提案権(1%以上保有)、帳簿閲覧権(3%以上保有)、会社解散請求権(10%以上保有)といった少数株主権は行使可能です。少数株主を減らし、株式を集約することで、迅速かつ自由な経営体制が構築できます。

2.株式の分散を防ぐことができる
株式が一族内で保有されている場合、相続などを機に、株式を保有する人が多くなり、保有株式が分散されていくことがあります。株式が散らばりすぎてしまうと、株主総会で重要な議決をするのも大変になってしまいます。スクイーズアウトで、分散した株式を集約することが可能です。

3.税制のメリットがある
株式交換などで完全子会社化した場合、組織再編税制の対象となり、税制上のメリットが受けられます。スクイーズアウトでも、株式売渡請求や株式併合のスキームで行う場合には、組織再編税制の対象となります。

【デメリット】
1.手続きが煩雑

スクイーズアウトを実行するには、複雑な手続きを踏まなければなりません。専門家のサポートも必要となるでしょう。

2.多数の株式を持つ大株主がいないと実行できない
スクイーズアウトの条件は、一定割合以上を保有している大株主がいなければなりません。すでに株式が分散していて持株比率が低い場合、必要とされる割合までは、スクイーズアウトの方法によらずに株式を買い集めなければなりません。

3.譲渡時の株価でトラブルになりやすい
スクイーズアウトを実行すると、強制的に株式を買い上げることになります。譲渡時の株価に納得してもらえない場合や、強制的な方法に反発されてしまってトラブルになるケースもあります。

M&Aでスクイーズアウトを使うケース

スクイーズアウトをM&Aのときに活用するケースとして、主に下記の2つがあります。

1.分散している株式を集約したいとき
オーナー企業が事業承継のためにM&Aを行いたいケースです。
株式が多くの人に分散してしまっていると、いざというときに意思決定が迅速にできなくなるリスクがあるため、一部の株式しか手に入らないのであれば、事業を引き継いでもらいにくくなります。

業歴の長いオーナー企業などの場合、親族の相続などが原因で、多くの人に少しずつ株式が分散してしまっていることがありますが、それを改善するために、スクイーズアウトを活用することができます。株式が分散したままでは自由な経営が困難になり、事業承継者が見つかりにくくなるデメリットもあるため、事業承継までに株式を集約して、問題を解消することが可能です。

2.事業再編にあたり、組織再編税制を活用したいとき
事業再編で資産等の譲渡が発生するとき、譲渡損益が課税対象となります。しかし、事業再編のためのM&Aで、多額の税金が発生するのは望ましくありません。そこで、一定の要件を満たせば組織再編税制の対象となり、資産・負債を簿価で引き継ぎ、課税が生じないようにすることができます。

スクイーズアウトの4個の手法

スクイーズアウトを実行する方法には、下記の4つの手法があります。

1.株式等売渡請求
議決権の90%以上を保有する特別支配株主がいれば、会社の承認を得て、少数株主の株式を強制的に取得することができます。
もっともスピーディーにスクイーズアウトできる方法ですが、持株割合の要件が厳しい方法です。

2.株式併合
複数の株式を1株にまとめる手続きである「株式併合」を用いた方法で、株式総会の特別決議で可決されれば実行可能です。
10株を1株にまとめる株式併合をした場合、9株以下の株式を1株未満(端株)に変化させられます。そうすることで、株主としての権利が行使できなくなるため、影響力を打ち消すことができます。端株になった株式は、最終的に会社が時価で買い取ります。

3.全部取得条項付種類株式
株主総会の特別決議で可決することで、すべての発行済株式を「全部取得条項付種類株式」という種類株に変更する方法です。その際、少数株主の持株が1株未満にならない比率で普通株から全部取得条項付種類株式に交換し、端株を会社が買い取ります。

4.株式交換
子会社の株主を、株式交換で親会社の株主に変えて、同時にスクイーズアウトを実現する方法です。株式交換で親会社の株主に変えたあとで、親会社が株式併合を行って、少数株主の保有する株式を1株未満に調整し、端株を会社が買い取ります。

M&Aのトラブルや課題は専門家に相談を

スクイーズアウトは、会社法で認められた「合法的な株式強制買い取り方法」ですが、それはあくまで制度上のことです。売渡請求に応じる側が強制的に買い上げられる心理を理解しておくことが大切です。言い換えると、「トラブルが起きやすい側面もある」と理解しておかなければならないということです。

「いくらで買い取るか」でトラブルになる場合は、適正な価格であることを証明しなければなりません。当事者同士ではなく、専門家が論理的に算出した価格であることを伝えることで、納得感が高まるでしょう。

また、感情的なトラブルに発展しないようにするのもポイントです。スクイーズアウトを実行するのは、スムーズに物事を進めたいからのはずですが、裁判や調停になってしまって解決に時間がかかってしまっては本末転倒です。

そうならないように、第三者として専門家が間に入ってもらい、冷静な話し合いを通してスクイーズアウトを迅速に進めることが必要になることもあると知っておきましょう。

M&A仲介会社の比較ポイントは以下の記事で詳しく解説しています。

おわりに

以上のように、スクイーズアウトを活用することで、より迅速な経営判断ができる体制を作ることができます。また、事業承継やM&Aによる売却が進めやすくなるメリットもあります。

しかし、複雑で専門知識が不可欠な制度であるうえ、強引に進めすぎると少数株主とのトラブルになって目的を達成できなくなるリスクもある方法です。専門家のアドバイスを聞きながら、慎重に進めていくようにしましょう。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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