バイアウトの4つの手法を解説、目的別バイアウトの選び方
2021.11.93 years前
「バイアウト」は、株式を買い取って経営権を取得することです。外部の会社や投資家によるものだけでなく、社内人材が事業承継や経営体制の刷新などを目的として行うバイアウトもあります。
本記事では、社内人材が行える4種類のバイアウトについて簡単に説明するとともに、目的別で取り得るバイアウト手法について解説します。
目次
バイアウトとは?
バイアウトとは、経営権を取得するために株式を買い取ることです。ただ株式を購入するだけでなく、経営権を取得するために、通常は過半数の株式を取得しようとします。他の株主の影響力を最小化する場合は、特別決議を単独で通すことができる3分の2以上必要です。
業績不振に苦しむ企業を再生したり、経営体制を安定的にしたりする目的で使われるほか、事業承継のために活用されるケースもあります。
なお、バイアウトには「外部の会社や投資家が株式を購入して経営権を得るもの」も含まれますが、本記事では、「社内人材が関わるバイアウト」に絞って解説しています。
M&Aとバイアウトは違う?
バイアウトはM&Aの一種です。M&Aは「合併と買収」という意味ですが、その中でも「経営権を取得する買収」がバイアウトというイメージです。
バイアウトの4つの手法
バイアウトと言っても、さまざまな手法があります。社内人材が関係するバイアウトについて、「誰が買収するか」という視点で分類される「MBO」「EBO」「MEBO」と、「どうやって買収するか」という視点で分類される「LBO」について簡単に解説します。詳しくはリンク先をご覧ください。
MBO(マネジメント・バイアウト)
MBOは「マネジメント・バイアウト(Management Buyout)」の略で、企業の経営陣が自社の株式を買い取って経営権を手に入れる手法です。現経営陣に変更なく買収するケースと、オーナー兼社長が他の役員に事業を承継するケースがあります。
EBO(エンプロイー・バイアウト)
EBOは「エンプロイー・バイアウト(Employee Buyout)」の略で、企業の従業員が自社の株式を買い取って経営権を手に入れる手法です。
MEBO(マネジメントアンドエンプロイー・バイアウト)
MEBOは「マネジメントアンドエンプロイー・バイアウト(Management and Employee Buyout)」の略で、経営者と従業員が一体となって自社の株式を買い取って経営権を手に入れる手法です。MBOとEBOがセットになったものです。
MEBO(Management and Employee Buyout) – M&A用語
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBOは「レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buyout)」の略で、資金を銀行などの金融機関から借り入れて会社を買収する手法です。ファンドからの出資を受けて、一緒に買収するケースは含まれません。
「買収資金の一部を借り入れる手法」であるため、誰が買収するかは関係ありません。そのため、MBOなどを実施する際だけでなく、外部の会社や投資家が買収する際にも使われることがあるスキームです。買収完了後、この借入金は、株主の負債ではなく買収した会社の負債になるという特徴があります。
目的別のバイアウトの選び方
このようなバイアウト手法をどのように選べばよいのか、いくつかのケースでの考え方を紹介します。
1.自社内の後継者に事業承継したい場合
自社内に後継者がおり、事業承継する場合には、承継者が経営陣の一員であればMBO、従業員であればEBOを選択することになります。承継後の経営体制を考えるならば、より望ましいのはMBOです。EBOを行う際は、承継後の経営体制や方針について、事前に詳細に検討しておくことが望ましいと言えます。
また、MBOでもEBOでも、買収資金が準備できないケースが多いでしょう。事業が安定したキャッシュフローを生み出すのであれば、LBOのスキームが活用可能です。
2.後継者が見つかっていないが事業承継したい場合
後継者が見つかっていないのであれば、従業員や外部人材まで視野を広げて承継者を探すことが大切です。そんな場合に、バイアウト手法の中で検討の余地のある方法がMEBOです。
この場合、役員持株会や従業員持株会が、ファンドからも出資してもらったり銀行等から融資を受けたりして、資金調達します。しかし、持株会が非上場企業を経営し続けることはメリットがありません。次の目標は他社へのM&AやIPOでイグジットすることとなります。そのため、将来成長できる見込みがある場合に限られるでしょう。
3.株主の意向に左右されず、中長期的視点で経営を進めたい場合
現在の経営陣が、中長期的な事業投資を行いたいため、株主の意向に左右されたくないという場合は、MBOが使われます。オーナー経営者が大半の株式を保有しているのであればMBOを実施する必要はありませんが、オーナー一族や取引先等に株式が分散している場合は有効な手段です。
また、中長期的な視点での経営で会社を成長させるインセンティブを従業員に与える目的で、MEBOを選択することも可能です。当面は役員・従業員持株会が株主となりますが、会社が成長すれば、イグジットなどを機に、キャピタルゲインで従業員に報いることができます。
4.事業再生をしたい
事業再生をしたい場合は、MBOなどのバイアウト手段を活用するのは難しいでしょう。そもそも、現在の経営陣・従業員の体制でうまくいっていないため、MBOやEBOを行ったところで状況が改善するとは考えられません。
また、業績のよくない会社は、安定したキャッシュフローを生み出せないため、買収会社の負債となるLBOのスキームを活用するのも難しいと言えます。
バイアウトするとしても、企業再生を専門とするファンドなどが中心となるバイアウトをして、外部からプロ経営者を招聘する方がよいでしょう。
おわりに
社内人材がバイアウトする手法には、MBO・EBO・MEBOがあり、銀行などの金融機関から買収資金を借りる場合はLBOのスキームを活用します。ただ、どの手法を活用するかは、事業承継者がいるかどうか、どのような経営状況かなどの条件で変わってきます。
間違った手法を使ってしまうと、その後の経営体制や経営状況にも悪影響を及ぼしかねません。それぞれの手法の詳細を確認し、必要に応じて専門家の意見も参考にしながら検討するようにしましょう。